和光小学校幼稚園校園長ブログ「子どものなる木」たくさんの本との出会いを!~小学校三学期始業式ごあいさつ~
3年ぶりにコロナによる制約がない長期休みだったこともあり、海外旅行に行ったという声も届きます。
三学期も感染対策をしながら、豊かな教育活動を進めていきたいと思っています。
始業式の翌日、幼稚園では3年ぶりに5歳児がもちつきをしました。保護者の方にもお手伝いにたくさん集まっていただき、幼稚園では初めて目にする「もちつき」に、子どもたちはワクワクしていました。
小学校は4年生以上が委員会活動として取り組んでいる図書委員会で、年に2回図書購入に行きます。各クラスの図書委員は、図書室で購入してほしい本のアンケートを取り、子どもの本の専門店に購入に行くための準備を進めています。
冬休み明け、校長室には卒業生で国際ジャーナリストの堤未果さんから最新刊が届けられていました。『ルポ 食が壊れる』。
報道の中で伝えられる「食」にまつわる情報に、なんとなく不安を覚えることがありましたが、まさに、私たちが日々口にする食べ物がこれだけブラックボックスの中に入ってしまっていたということに戦慄を覚えました。
前著『デジタル・ファシズム』とのつながりの中で、一握りの大きな力を持った人たちが私たちの生き方そのものを牛耳っている事に対して無頓着でいてはいけない、と改めて考えさせられました。
年末にはカウンセラーの江藤先生が紹介してくださった矢嶋楫子さんの人生を描いた『われ弱ければ』を読み、明治の女性が置かれていた過酷な状況と、それを乗り越えて教育と社会運動に力を注いだ一人の女性の生き方に心打たれました。
三学期始業式、子どもたちにはこの2冊の本を紹介し、たくさんの本と出会ってほしい、と語りかけました。
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明けましておめでとうございます。2023年が始まりました。
今年は始業式が1月10日で、いつもより少し長い冬休みでしたね。この冬休み、みなさんはどのように過ごしたでしょう? 旅行に行ったりおじいちゃんやおばあちゃんに会いに行った人もいるかもしれません。夏休みのように「こつこつ、どかん」や「自由研究」に取り組むことはなかったかもしれませんが、ふだんできないことをやったり、久しぶりに親戚の人に会ったり、楽しい時間を過ごしたのではないでしょうか。
新しい年の初めに、本の話をしたいと思います。和光小学校のみなさんは図書室を利用する人が多く、本を読むことが好きな人がたくさんいること、とてもいいことだと思っています。
本を読むと今まで知らなかった事がわかり、新しい世界に飛び込むことができるような気持ちになります。だから私も小さい頃から本を読むのが大好きなのですが、大人になってからは他にやることがたくさんあって、ゆっくり本を読むことができないでいます。ですから、冬休みなど長いお休みの時に時間をかけて本を読むことができるのを楽しみにしているのです。
私はこの冬休み、2冊の本と出会いました。
1冊は、冬休み前に江藤先生が貸してくださった『われ弱ければ』という本です。これは20年以上前に三浦綾子さんという作家が書いた本で、今から100年ぐらい前に学校を創った矢嶋楫子さんという人のことが書かれています。
この頃は、女の人は学校へ行ったり自分がやりたいことをしたりすることができない時代でしたが、矢嶋さんはとても苦労して女の子が通うことができる学校を創りました。そして子どもたちが自分のことを自分で考えられるように、と学校のきまりをほとんどなくしました。
和光小学校も必要のないきまりは作らないようにしていますが、この時代にはとても珍しいことでした。矢嶋楫子さんという昔の人に本の中で出会うことができ、考えさせられることがたくさんありました。
もう1冊は、和光小学校から和光中学、和光高校を卒業して「国際ジャーナリスト」という仕事をしている堤未果さんが、12月末に送って下さった『ルポ 食が壊れる』という本です。
冬休みに入ってから届いたので、私は先週土曜日に手にしたのですが、ビックリする内容で、一気に読みました。
この本に副題といってもう一つの題名がついていて、「私たちは何を食べさせられるのか?」となっています。
5年生6年生のみなさんは社会科で農業の勉強をし、総合学習で「食」に取り組み、食べ物の安全性について学んだと思います。私たちが毎日食べているものがどのようにして作られ、からだに悪いものが入っていないか、などを知ることは、健康に生きていく上でとても大切なことです。でも今、世界中の農業に今までにないことが起こり、ほんとうに安全な食べ物かどうか確かめることができなくなっているのです。
この本を書いた堤未果さんは、事実を確かめるために日本だけではなく、外国でもたくさんの人に会い、証拠になるものを確かめ、多くの人に知ってもらわなければならない、と思ったことをこのように本にしています。自分で調べ自分で確かめたことだけ信じることができるということは、和光学園で学んだことだと話してくれたことがありました。
この2冊の本は、ちょっと難しい内容ですが、堤未果さんの『社会の真実の見つけ方』(岩波ジュニア新書)という本は、図書室にもあり、高学年の人には是非読んでほしい一冊です。
今はネットで検索すると知りたいことがすぐわかるようになっていますが、本を読むことは知りたいことがわかるだけではない、もっともっと豊かな世界を拡げてくれるものです。今年、みなさんもたくさんの本と出会ってほしいと思います。